日本語翻訳_1CDS_Executive summary
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はじめに
気候変動によって、自然災害がビジネスに及ぼす悪影響の程度が深刻化し、環境(E)、社会(S)、およびガバナンス(G)への配慮を基準とするESG関連のディスクロージャーを重視する投資家が増えてきています。これに従い、事業用拠点の重要性に着目する企業、資産所有者、行政、および地域社会のステークホルダーからは、自然災害のリスクを表すひとつの指標としての「レジリエンス」の開示を求める声が高まっています。ここで、「レジリエンス」とは、自然災害により受ける被害だけではなく、被害を受けた後の回復までを含めた、自然災害に対する抵抗力をいいます。その結果、ESG+Rの領域では、新たなリスク分析手法を開発することの重要性が急速に高まっています。レジリエンス・テクノロジー企業であるOne Concernは、One Concern Downtime Statistic(ダウンタイム・スタティスティクス)(1CDS™)と呼ばれる新しいレジリエンス分析手法を開発し、既存のリスクおよび評価モデルにレジリエンスに関する拠点レベルの評価を追加することで、事業用不動産の自然災害に対するレジリエンスを、拠点ごとに時系列で、一貫性のあるシミュレーションを通して容易に比較できるようにしました。このようにして、ダウンタイム(回復するまでの時間)という指標を活用してレジリエンスを定量化し、評価することが可能になります。ダウンタイム・スタティスティクスは、商業データから地域社会や住民に関するデータまで拠点レベルで収集したデータをもとにしている。こうしたデータは、ライフラインインフラのネットワークを形成する要素(電力、輸送網など)を適切にモデル化するために使われる。このモデル化は、ハイパー・ローカル・レベル、およびグローバル展開を視野に入れた大規模スケールで、ネットワークの相互接続性を反映するために行っているものです。このネットワークの相互接続性は、インフラの堅牢性、相互補完性やビジネスにおける有用性を担保するために必要なものです。
エグゼクティブ・サマリー
One Concernは、収集したデータと1CDS™を活用したデータ分析を提供し、事業用拠点が自然災害のリスクにどの程度さらされているのかを明らかにします。データと分析を組み合わせることでレジリエンスに関する一連の統計データが作成され、以下のリスク要素の予測が可能になります。
● 特定の場所にある拠点の損害率
● 拠点への直接的な物的損害や、電力ネットワーク・輸送インフラ・その拠点を利用する地域社会の損害から生じる、場所ごとの拠点のダウンタイム
概要
ホワイトペーパーで述べられている、レジリエンス・スタティスティクスを活用することで、特定の拠点についてのOne Concern Exceedance Probability(超過確率)(1CEP™)と1CDS™、そしてこれらを反映したOne Concern Resilience Score(レジリエンススコア)(1CRS™)というレジリエンス指標が導き出されます。こうした指標や統計データは、さまざまなバリュエーション(事業価値評価)やリスクの評価に応用することができます。例えば、複数の地点におけるレジリエンス・スタティスティクスや指標の比較が可能であることから、リスクの選択(建物Aは建物Bと比べてリスクが有意に高いなど)が容易になります。こうした指標に若干の分析を加えることでOne Concern Expected Financial Loss(期待財務損失)(1CEL™)が導き出され、レジリエンス関連に付随する要因による同程度の潜在的損失を把握し、レジリエンスレベルに応じて調整されたバリュエーションモデルを開発することが可能になります。これらの指標をシミュレーションに基づくリスクモデルに組み込み、条件付期待損失(CVaR)や期待テール損失(ETL)の予測にレジリエンスを考慮することもできます(1CRS™、1CEP™、1CEL™について、および可能な応用方法についての詳細は、One ConcernのUmbrella Methodologyホワイトペーパーを参照のこと)。本文書では、1CDS™の基礎となるデータと手法について説明します。
この分析手法で特に有効的かつ画期的な点として、拠点に損失をもたらす要因と気候変動による相互作用を調べるために、RCPに基づく気候変動シナリオ(RCPシナリオ)が組み込まれています。この枠組みを活用することにより、アナリストは、バリュエーションモデルやリスクモデルに気候変動リスクを体系的に組み込むことが可能になります。また、特定の拠点について、エネルギー源の変化がコストとレジリエンスにどのように影響するかを評価するというのも、気候変動を考慮することができるOne Concernのソリューションの一つです。
1CDS によるリスク選択、価格設定、マネジメント、緩和策の改善
1CDS™のようなレジリエンスデータや、収集された関連データは、意思決定を支援するワークフローに組み込むことで、さまざまな形で付加価値を提供します。ホワイトペーパーの「ケーススタディ」と「ディスカッション」のセクションでは、レジリエンスに関する統計データを活用してリスク選択、価格設定、リスク管理に関する分析をサポートした複数の事例や、可能な応用方法を紹介しています。1CDS™と関連する収集されたデータにより、資産オーナーや資産運用会社はレジリエンス調整に優れたバリュエーションモデルの開発が可能になり、銀行では事業用不動産に対する担保モデルを改善することができます。また再保険会社では、分析を活用することで、事業中断(BI)、偶発的事業中断(CBI)、物的損害を伴わない事業中断(NDBI)といったさまざまな再保険対象に対する引受業務やリスク管理を向上させることができます。従来の金融モデルでは気候変動やその他の災害がもたらすリスクは考慮していなかったのに対し、この手法では、十分に詳細なデータを提供することで既存のバリュエーションモデルやリスクモデルを修正し、そうした災害に関するレジリエンスも組み込んでいることが強みになります。特筆すべきなのは、1CDSが特定の建物への被害だけでなく、企業がライフラインへの依存により受ける可能性のある影響についても反映している点です。これにより、レジリエンスをめぐる議論は、特定の拠点に焦点を当てた狭いものから、その特定の拠点に関係する複数の企業が生み出す価値を評価するより範囲の広いものへとシフトしています。
これらの統計データのもう一つの重要な活用方法として、緩和措置を講じることによるレジリエンス強化の取り組みを、より確実に評価する手法の開発があります。これにより、企業や規制当局は、気候変動に関連する緩和および適応の目標を達成するための取り組みをよりよく評価することが可能になります。リスクモデルやバリュエーションモデルにレジリエンス調整を加えることで、アナリストは提案されている緩和策によって拠点のレジリエンスにどのような定量可能な変化がもたらされるかを探ることができます。事業用不動産に関与するさまざまなステークホルダーがその価値、負債利率、保険料の変化について客観的な議論をできるようになれば、こうした予測をベースに、提案されている緩和策に関する投資利益率(ROI)予測の信頼性を高めることができます。
レジリエンスをモデル化するさまざまなアプローチ
レジリエンススコアは、この種の有益な分析手法として新しいものではありません。これまでにも、潜在リスクを測定するだけでなく緊急時のリーダーの行動力を評価するという目的で、都市レジリエンス指数(CRI)(Silva and Morera 2014)や国連防災機関(UNDRR)フレームワーク(国連防災機関 2015)など、複数の広範な枠組みが開発されています。これらは主観的評価によるマトリックスアプローチを用いており、自己評価に依存する傾向があります。このようなアプローチ手法を取ると包括性は高くなりますが、主観的な評価や、スコアの比較がしづらいことにより、ポートフォリオ分析における有用性は限定的になります。別の研究者が開発したアプローチには、社会的脆弱性指数(SoVI)(Cutter et al. 2003)やCOPEWELL(Links et al. 2018)など、特定の脆弱性を示す代替指標を提供するものもあります。これらのスコアは、入手可能なデータに基づいてより容易に算出できますが、一方で対象が狭く、広範囲に及ぶシナリオ分析や緩和策のROIの算出に組み込みにくい傾向にあります。さらに3つ目のアプローチ手法として、IN-CORE(コロラド州立大学 2021)やHAZUS(Plasencia et al. 2020)のようなツールを使い、将来受ける被害による影響を直接的に測定・予測する方法もあります。これらのツールは脆弱性についての理解や、緩和策によってレジリエンスがどのくらい向上するかの理解を促進します。ただし、あくまで研究者が利用することを目的に開発されたものであり、実用の際には専門家による必要データへのアクセスを包括的に認めることが要求されるなど、商業的に幅広く応用するには現実的ではありません。
One Concernのアプローチは、物理的法則に基づく(例:脆弱性ファンクション)モデルと機械学習のモデルを併用して、建物単位でレジリエンス分析を行い、建物間、地域間、そして時間経過による比較ができるようにすることを目指しています。One Concernはレジリエンスについて、(その拠点と関係する)個人、企業、地域社会が急な被害や長期的ストレスに直面した時に引き起こされ得るショックやストレスの影響を最小限に抑える措置を講じ、また実際引き起こされた場合、そうした災害の影響に適応し、災害から回復することで、通常の機能を再開できる能力と定義しています。災害に伴う直接的影響、回復にかかる時間、連鎖的なネットワーク機能不全による間接的影響を測定することにより、One Concernの手法は特定の拠点における災害リスクや、その拠点に依存する組織に機能停止が及ぼす影響について、俯瞰的な視点を提供します。
One Concernの手法の優位性
One Concernが採用する手法と計算プロセスには以下のような利点があります。
● ばらばらになった幅広いソースからデータを取り込み、集約しフォーマット化した状態のレジリエンス関連データへのアクセスを提供します。
● 拠点間や時間経過による比較が可能な、レジリエンスに関する総合的な統計データと指標を提供します。これらの統計データと指標は、リスク評価、バリュエーション、シナリオ分析、シミュレーションに適した一連の分析に用いられます。
● 災害が建物の機能に直接影響して生じるダウンタイムの他に、建物の正常な機能に不可欠な電力、輸送、地域社会といったネットワークに障害が発生することでもたらされる間接的な影響についても、総合的に評価を行います。
● 組織が計画期間に応じた累積リスクを理解できるよう、異なる計画期間でのレジリエンス・スタティスティクスを提供します。
● 気候変動リスクを評価し、個別拠点やそのポートフォリオについて比較可能で一貫性のある分析ができるよう、気候変動シナリオを客観的かつ完全に融合します。
● 機械学習を活用して最高クラスのレジリエンスモデルを開発します。例えば、One Concernでは、異なる震度の地震が建物に及ぼす被害を予測する革新的な機械学習モデルを開発しています。ただし、被害予測の策定においては、関連モデルの仕様として従来のような物理法則に基づくモデル(脆弱性モデルなど)が利用されることも頻繁にあります。そのようなケースでは、従来の物理モデルを活用した機械学習モデルによって、もっとも信頼できる被害予測が生み出されます。
● 物理学、統計学、および機械学習によるモデルを取り入れ、建物や拠点レベルの詳細な統計データや指標を生成します。モデル開発の裏付けとなる信頼できるデータにアクセスできるのであれば、機械学習モデルを開発するのが望ましいでしょう。適切な機械学習モデルの開発が不可能な場合、入手可能な情報を最大限に活用し、物理学または統計学をベースとしたモデルを導入します。厳密にモデル化されたパフォーマンスの条件において優れた成果を発揮するというだけでなく、商業的に有益な手法を実施できるモデルを選択肢の中から選定することが、One Concernのアプローチの重要な特徴となります。
● 機械学習を応用することで不足するデータを補完し、建物のダウンタイムを発生させる要因に関するデータの網羅性を向上させます。この合成データ生成機能を革新的な形で応用し、ネットワークデータの要素(電力、輸送、地域社会などのデータ)を補完することで、拠点の有用性が外部ネットワークにどの程度依存しているかを反映します。
● 対象とする計画期間に対して、一般的に使われているバリュエーションモデルやリスクモデルに簡単に融合させ、レジリエンス調整をシームレスに付加できる分析の枠組みを作り出します。特に、シミュレーションに基づく総合的分析、詳細なシナリオ分析、幅広い感応度分析をサポートすることができます。
商用利用を実現する信頼性の高いレジリエンス分析の構築
One Concernの手法と計算プロセスのワークフローは定期的に検証され、当該の研究分野の専門家で構成されるテクニカルワーキンググループ(TWG)から助言を受けます。検証プロセスでは、過去データの適用や公開されている研究内容との比較により、高水準の正確性と安定性に努めます。One Concernはまた、レジリエンスモデルを専門とする幅広い研究コミュニティでも積極的に活動しています。
One Concernが採用する手法の重要な特徴の一つに計算要素の選択があり、これは単にモデル性能基準(拡張性、処理速度、堅牢性など)を満たしているだけではありません。One Concernは自社内、独立した専門家で構成されるテクニカルワーキンググループ、さらにはより広い業界内の個人的つながりといった研究者ネットワークに大きく依存しています。こうした交流は、レジリエンスに関するOne Concernの統計データや指標を利用する上での重要な利点となっています。極端な学術的アプローチでは計算に使う要素の視野が狭くなり、商業的応用には適さない可能性があります。一方で、極めて商業的なアプローチでは、学術界で次々と開発される革新の恩恵を受けられません。One Concernの手法と計算プロセスのワークフローは、双方の長所を最大限に生かしています。これは、場合によっては、最新かつ最も優れた機械学習のアルゴリズムが組み込まれないこともあるということです。とはいえ、今後の開発によっては新しい機械学習アルゴリズムが妥当と判断され、計算要素として選ばれるかもしれません。今後もハードウェアの性能、アルゴリズム的理解、顧客からの意見、学術界の意見が活発な開発を下支えし、その結果、緩やかに変化しながらも、常に堅牢性を維持したアプローチが生まれ、適切な統計データや指標が導き出されるでしょう。従って、手法について説明している本文書も時間の経過とともに変化する可能性があるため、常に最新版をご確認ください。
用語集
TM 1CDS :One Concern Downtime Statistics(ダウンタイム・スタティスティクス)。事業用拠点が通常の事業運営をサポートできない恐れがある総時間を見積もったもので、拠点への直接的な物理的損害や、ライフラインのネットワーク(電力、輸送、地域社会など)の損傷による使用不能期間(ダウンタイム)を考慮して導き出されます。
TM 1CEL : One Concern Expected Financial Loss(期待財務損失)。1CDS によって見積もられた拠点のダウンタイムの関数として、会社が被る恐れがある財務損失の見積もりを表します。
TM 1CEP :One Concern Exceedance Probability(超過確率)。事業用不動産や、建物の機能を支えるライフラインのネットワークが、建物の通常の事業運営をサポートできないほどの損害を受ける、または障害を起こすと定義される一定のしきい値を超える災害(台風・ハリケーン、地震、強風、火災など)が発生する確率の見積もりです。1CDS および1CEL の見積もりは、1CEP に反映されているしきい値を超えることを条件としています。
TM 1CRS :One Concern Resilience Score(レジリエンススコア)。拠点のダウンタイムに確率調整を加えた見積もりを表すもので、1CEP ×1CDS の計算式で単純に算出が可能です。スコアが低いほどレジリエンスが強固であることを示し、スコアが高いほどレジリエンスが脆弱であることを示します。1CRS は、レジリエンス格付に分類できます。
BI:事業中断。BI保険は、企業の事業運営に不可欠な事業用不動産(オフィス、倉庫、工場など)に依存する企業において、その事業運営が中断するリスクを補償します。この保険は、企業の事業用不動産に直接的な物理的損害が生じた場合の事業中断を補償します。
CBI:偶発的事業中断。CBI保険は、サプライヤーや顧客の事業中断リスクをカバーします。つまり、この保険は、保険契約を購入した企業には直接的な損害を与えない場合であっても、サプライヤーまたは顧客で発生した事業中断の悪影響を補償保障します。通常、偶発的事業中断保険は他の商業保険に付帯される保険契約であり、単独では販売されません。
CVaR:条件付きバリュー・アット・リスク。資産ポートフォリオの平均極値損失を表すもので、極値損失が発生するポイントとして、具体的なしきい値が定められます。ETLとも呼ばれます。
ESG:環境、社会、ガバナンス。企業の財務諸表に通常組み込まれないものの、長期的な時間軸で財務状況に反映される非財務要因のカテゴリーです。ESG要因は、倫理や持続可能性に関する問題に焦点を当てています。ESGにレジリエンスを指すRを追加することで、標準的なESG要因ではカバーされない倫理・持続可能性の領域にまでその範囲が広がります。
ETL:期待テール損失。ポートフォリオ損失分布のテール領域における平均損失を表すもので、テール領域には具体的なしきい値が定められています。
NDBI:物的損害を伴わない事業中断。NDBI保険は、事業用不動産への損害は発生していないものの、イベントの発生によって事業用不動産が正常に機能するうえで不可欠なネットワーク(電力、水、輸送、インターネットなど)に障害が発生して事業が中断した場合の、企業の通常機能の中断リスクをカバーします。
RCP:代表的濃度経路。温室効果ガスの濃度を測る数値の一つで、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が気候変動シナリオを示す目的で使用しています。RCPシナリオは、西暦2100年までに想定される正の放射強制力(地球の温暖化につながる正味のエネルギー増加量)によって分類されています。放射強制力は温室効果ガスの濃縮により生成され、地球上の1平方メートルあたりのワット数で表されます。中間的なシナリオであるRCP4.5によれば、2100年までに摂氏2〜3度の地球温暖化が引き起こされる可能性が高いとされています。より極端なシナリオであるRCP8.5によれば、2100年までに摂氏3〜5度の温暖化が見込まれています。
参考文献
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